人間は愚かなほど可愛い

14冊目 夜の桃 石田衣良

現代版「人間失格」。
才能も地位も名誉も、金も家庭も愛人もあるのにまた浮気する。
そんで身を亡ぼす。

石田衣良の性愛描写は瑞々しくて好きだ。
最初女性だと思っていたくらい、緻密に描かれている。
男が興奮する内容ではないんじゃないかなぁ。
少なくとも村上春樹よりはずっとセックスが巧そうだ。笑

IT企業の社長が妻と愛人との充実した三角関係を楽しんでいるところ、
自分の会社に契約社員で入ってきた若い処女の子に溺れて身を亡ぼす話。
リスクの方が明らかに勝るのに体の相性がよすぎるというw
面白いほどずぶずぶになっていく社長、可愛い。
いやーこの刹那的に有頂天になる感じ、スリルと罪悪感と計り知れない優越感。
今この瞬間だけは自分が世界で一番幸福だと思えてしまう全能感。
わか、わかr、わっかんねーよバーカ!!!!!!
本当のクズは真面目に純粋にクズなので、人を傷つけようとしたり人を嵌めようとしているわけじゃない。
ただただ自分の心の通りに、好きな人に会って好きな人と愛し合っているだけなのだ。
同時多発的に好きな人が存在していることで、誰かをぞんざいに扱うわけでもない。
妻には妻への愛情を、愛人には愛人への愛情を、全部嘘偽りなく全力で注ぎこんでいる。
こう見ると愛情を沢山持っている人のように見えるけれど、やはり人間の持てる愛情の総量は決まっていて、分割すればそれだけ本当に深くまではいけないのだと私は思う。
愛情に嘘はなくあるものすべてを注いでいたとしても、それはやっぱり、浅いのだ。
浅い愛情では人をすっぽり全部包むことはできないのだ。
半身浴みたいな状態では風邪を引いてしまうのだ。
熱い半身浴を繰り返すのは心臓にも悪いのだ。

でもここまで書いて思ったけどこの社長は多分一人に絞ったところでその愛情の深度が増すこともなさそう。
元々、もしかすると男と女では愛情の受け皿の深さが違うのかも知れない。
男は深く愛されて、女は浅く愛されるようにできているのではないか?
そもそも男には深い愛情などというものは存在しないのかもしれない。
ハー男クソ。

ぬるま湯みたいな愛情にどっぷり肩まで浸かって生きていきたい、と思いました。
だとするともう女と付き合うしかないんじゃない?
それもそれでどうなんでしょうなぁ。

最近になって、自分の今の気分にフィットする本を探し当てるのが本当にうまくなったなと感じる。
子供の頃は、なんか本読みたいなと思って適当に買ってきても、気分に合っていなくて積むことがよくあった。
作家を知ることである程度傾向が計れるようになったこともあるし、自分の気分を正確に認識する精度も上がっているんだと思う。
このように自分の求めているものを自分が正確に認識して提供して、自分自身でご機嫌を取っていけるようになるということが、少しずつ大人になっているということなのかもしれない。

なんとなく石田衣良の気分なのでしばらく石田衣良が続くかも知れません。

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