「愛」という言葉を得た時から、人は愛を失った

1冊目 愛がいない部屋 石田衣良

神楽坂の高層マンションに住む、住人それぞれの姿を描いた、10のショートストーリー。
主人公は全員女性。(一つを除く)
基本的に愛や恋に苦しんでいる。

空を分ける
付き合ってない男女でルームシェアをして、いけるかな?と思ったらそうは問屋が卸さない話。

魔法の寝室
不感症で感情が希薄な女が寝室の壁紙を変えた途端いい感じになる話。

いばらの城
毒親の呪いで自己肯定感のない女が、彼氏と結婚するよりも独身で自分のマンションを買った方が安心だわとなる話。

ホームシアタ-
息子が引きこもりニートで、困ってるような困ってないような話。
これは親父目線でした。

落ち葉焚き
夫が死んで七年になる六十三歳の女性が同じ未亡人の人を好きになって静かにお付き合いする話。

本のある部屋
金持ちの既婚男性に声を気に入られて部屋を与えてもらって、本を朗読するだけの不倫(?)をする話。

夢の中の男
セフレいっぱい作って楽しげに不倫してるけど実は夫に相手してもらえないのがさみしいだけだという話。

十七カ月
不妊からの早産で障害を持って生まれた子の育児に苦しむ話。

指の楽園
若い男の子がマッサージしてくれるのは最高の癒しだけどえっちなのは違うんだよなぁという話。

愛がいない部屋
DVしんどいけど耐えないでまた人生やり直してみた方がよくない?という話。

雑すぎですみません。
全体を通じて虚無感の強い、空っぽで重たい話ばかりなんですが、内容よりも今回は解説にぐっときました。
解説は名越康文。
そこでは「愛を求め、苦しむ人たちは、その愛という言葉に毒されている。必要とされたい、を愛されたいに置き換えてしまっている。愛という言葉こそが害悪だ」というようなことを書いています。

私はここのところ、
人の「好き」をひとつとっても「そばにいたい」なのか「笑っていてほしい」なのか「話を聞いてほしい」なのか「セックスしたい」なのか「自分を必要としてほしい」なのか
それは人それぞれでもあるし、場合にもよる。
なのに「私は好きなのにあなたは私のことを好きになってくれない」のようなことが起きる。
もっと詳細なニュアンスで、もっと正確に自分の心を人に届ける方法はないものか、逆も然り。
そんなことを考えていたので、この人の言ってることは近いなと思いました。

「愛されたい」その中身は何か。
もっと言えばかなり多くの言葉がそうだと思う。
手軽に他人に言葉を送信できる時代だからこそ、言葉の中身をもっと追究すべきだ。
その言葉を口にしているとき、同じ言葉であっても他人は違う意味で使っていると思った方がいいくらいだ。
愛とは何か、なんて壮大な議題じゃない。
「愛」という言葉を使わずに自分の思う愛を表現してみると、愛の呪縛から解き放たれるんじゃねえか?
固定概念とか先入観とか捨てて、自分の言葉と、人の言葉の真意を考えてみること、それがつまりは「愛を考えること」になるんじゃねえか?

というようなことを考えました。
こいついつも同じこと言ってるな!
本を読んでいる時、多くの場合はそこに新しいものを見出すというよりは自分の思考の補助にしていて、考えてることが変わらない限りそこから抽出している情報も結局同じものになってしまうんですよね。
新しい要素を入れるにはミステリが一番なんですが、最近はしんどいと思いつつもこういった自分の思考補助的な本ばっか読んじゃってますね。
買ってまだ読んでない本もあるけど、ちょっと新しい空気入れるために明日は初めて行く図書館に行ってこようかな。

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