11冊目 海を感じる時 中沢けい
2018年9月18日 読書海は暗く深い女たちの血に満ちている。
11冊目 海を感じる時 中沢けい
1978年に当時18歳の女子大生だった中沢けいの処女作。
映画化もされて,そっちを先に観ていた。
映画よりも小説の方が,男女だけでなく女の物語という感じがした。
映画ではどこで海を感じているのか,海の役割がよく分からなかったけど,小説でははっきりしていた。
母なる海。海は母体。女は海。
そのような表現はいくらでも見るが,もっと生々しく海は生理だと言っている。
生臭い女の血だと。
自分の中に女を発見し,母の中にも女を発見し,海は生理なんだと,女の身体の一部なんだと発見する話。
なんというか,私も中学の時に母に女性性を断罪されて,怒り狂って泣きわめく母を見て「ああ母も女が憎い女の一人なんだ」と思ったし,母と娘は親子でありながら女と女なので一生敵対するし,それでもお互いが愛しいことに変わりはなく,自分の中にある女と,戦っていかなくてはならないんだと知ったし,この血生臭い小説はそのままあの血生臭かった獣の頃の私だし,きっと18歳の彼女だから書けたんだろうなと思う。
人間は生理の血の中から生まれる。そして二次性徴で自分からもその血が漏れ出す。
身体がもう一度生まれなおす時,血まみれの姿で母を求めても,その時母はもう老いていて,自分を受け止めてはくれない。
むしろ,拒絶を表す。
そこでもう,二人で一つの存在ではなく,個と個に関係性も変化していく。
見えないへその緒が今度こそ断ち切られる。
映画では男をきっかけに自分の性を自覚していくんだけど,小説ではそれはあくまできっかけに過ぎないような書き方だと思う。
とにかく,表現力がすごい。
場面転換の説明風のもたもたした文章が一切なくて,なめらかでみずみずしい。
そこがどこであるか,どれくらい歩いたかとかは本来重要じゃなくて
雨水が背中にも胸にも伝い,その冷たかった水が体温で温まる,それだけの描写で時間経過を表すのがいい。
これだああああああ小説ってのはこれなんだあああああってなりましたね。
現実の時間や状況なんてどうでもいいんですよ,それをどう表現するか,なんですよ。
最高だなぁ天才だなぁ。
彼の子供が生みたい,生理が遅れているから多分妊娠している,ということを告げたあとに生理が来た時
「クシャクシャになったスカートの中で、すっと小さな蛇が逃げだした。岩の割れ目から今を待っていたように、鋭く体をくねらせ、出てきた。あっ、声がもれたかもしれない。二匹目が逃げだしてきた。小さな赤い蛇が水晶のような目で、静かに見つめている。」という表現があるんだけどここのあまりの美しさは平伏したね。
これでふいに経血が漏れだしたことを、生理がきたことを、「彼の子供ができていなかった」ことを表すの、本当に天才でしょう。
中沢けいの他の作品も読んでみようと思いました。
11冊目 海を感じる時 中沢けい
1978年に当時18歳の女子大生だった中沢けいの処女作。
映画化もされて,そっちを先に観ていた。
映画よりも小説の方が,男女だけでなく女の物語という感じがした。
映画ではどこで海を感じているのか,海の役割がよく分からなかったけど,小説でははっきりしていた。
母なる海。海は母体。女は海。
そのような表現はいくらでも見るが,もっと生々しく海は生理だと言っている。
生臭い女の血だと。
自分の中に女を発見し,母の中にも女を発見し,海は生理なんだと,女の身体の一部なんだと発見する話。
なんというか,私も中学の時に母に女性性を断罪されて,怒り狂って泣きわめく母を見て「ああ母も女が憎い女の一人なんだ」と思ったし,母と娘は親子でありながら女と女なので一生敵対するし,それでもお互いが愛しいことに変わりはなく,自分の中にある女と,戦っていかなくてはならないんだと知ったし,この血生臭い小説はそのままあの血生臭かった獣の頃の私だし,きっと18歳の彼女だから書けたんだろうなと思う。
人間は生理の血の中から生まれる。そして二次性徴で自分からもその血が漏れ出す。
身体がもう一度生まれなおす時,血まみれの姿で母を求めても,その時母はもう老いていて,自分を受け止めてはくれない。
むしろ,拒絶を表す。
そこでもう,二人で一つの存在ではなく,個と個に関係性も変化していく。
見えないへその緒が今度こそ断ち切られる。
映画では男をきっかけに自分の性を自覚していくんだけど,小説ではそれはあくまできっかけに過ぎないような書き方だと思う。
とにかく,表現力がすごい。
場面転換の説明風のもたもたした文章が一切なくて,なめらかでみずみずしい。
そこがどこであるか,どれくらい歩いたかとかは本来重要じゃなくて
雨水が背中にも胸にも伝い,その冷たかった水が体温で温まる,それだけの描写で時間経過を表すのがいい。
これだああああああ小説ってのはこれなんだあああああってなりましたね。
現実の時間や状況なんてどうでもいいんですよ,それをどう表現するか,なんですよ。
最高だなぁ天才だなぁ。
彼の子供が生みたい,生理が遅れているから多分妊娠している,ということを告げたあとに生理が来た時
「クシャクシャになったスカートの中で、すっと小さな蛇が逃げだした。岩の割れ目から今を待っていたように、鋭く体をくねらせ、出てきた。あっ、声がもれたかもしれない。二匹目が逃げだしてきた。小さな赤い蛇が水晶のような目で、静かに見つめている。」という表現があるんだけどここのあまりの美しさは平伏したね。
これでふいに経血が漏れだしたことを、生理がきたことを、「彼の子供ができていなかった」ことを表すの、本当に天才でしょう。
中沢けいの他の作品も読んでみようと思いました。
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